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管理職研修で防ぐパワハラ|指導との境目と、経営者・人事が組むべきハラスメント対策

管理職

はじめに

「厳しく言っただけで、パワハラだと言われた」。管理職から、こうした声を聞くことがあります。部下を育てるための指導と、パワハラに当たる言動の境目が分からず、指導そのものを控えてしまう管理職もいます。

経営者にとって、管理職は現場を任せている大切な存在です。その一方で、管理職の言動がハラスメントとして問題になれば、会社全体のコンプライアンス違反として責任を問われることになります。

この記事では、経営者と人事担当者の方に向けて、次の内容を説明します。

  • なぜ管理職がハラスメント対策の要になるのか
  • パワハラの定義と、指導との境目
  • 管理職がつまずきやすい場面(セクハラ、カスハラ、就活セクハラ)
  • 相談を受けたときの初動
  • 効果のある管理職研修の条件

「管理職研修はやっているが、実際に現場で判断できているかは分からない」という方にも、参考にしていただける内容です。

なぜ管理職がハラスメント対策の要なのか

管理職は、ハラスメント対策において2つの面で重要な立場にあります。

行為者になり得る立場

パワハラは「優越的な関係」を背景にした言動です。部下に指示を出し、評価をする管理職は、その立場そのものが「優越的な関係」に当たります。本人にそのつもりがなくても、言い方や指導の仕方しだいでパワハラと判断される可能性があります。

厚生労働省の令和5年度「職場のハラスメントに関する実態調査」では、過去3年間にパワハラを受けたと答えた労働者は19.3%でした。およそ5人に1人の割合です。自社でも起きている可能性を前提に考えておくほうが現実的です。

相談を受ける立場

もう一つは、部下からハラスメントの相談を受ける立場です。社内に相談窓口を設けていても、実際にはまず身近な上司に話すという従業員もいます。そのときの管理職の対応が適切でなければ、問題が大きくなったり、「会社に相談しても無駄だった」と受け取られたりします。

つまり、管理職研修では「自分がハラスメントをしない」ことと、「部下の相談に正しく対応する」ことの両方を学んでもらう必要があります。従業員向けのハラスメント研修をそのまま管理職に受けてもらうだけでは、後者の内容が抜けてしまいます。

パワハラの定義と、指導との境目

パワハラの3つの要素

職場のパワハラは、次の3つの要素をすべて満たすものと定義されています。

  1. 優越的な関係を背景とした言動であること
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
  3. 労働者の就業環境が害されるものであること

裏を返せば、業務上必要で、相当な範囲で行われる指導はパワハラには当たりません。部下のミスを指摘することや、改善を求めることは、管理職にとって必要な仕事です。問題になるのは、その「範囲」を超えたときです。

パワハラの6つの類型

厚生労働省の指針では、パワハラの代表的な言動が6つの類型として示されています。

類型例
身体的な攻撃殴る、蹴る、物を投げつける
精神的な攻撃人格を否定する言葉、大勢の前での威圧的な叱責を繰り返す
人間関係からの切り離し特定の人を仕事から外す、集団で無視する
過大な要求明らかにできない量や内容の仕事を押し付ける
過小な要求能力や経験とかけ離れた簡単な仕事しか与えない
個の侵害私的なことに過度に立ち入る

いわゆる「モラハラ」は法律上の類型ではありませんが、職場での無視や人格否定は、「精神的な攻撃」や「人間関係からの切り離し」としてパワハラに当たる可能性があります。

境目を分けるのは「内容」と「やり方」

同じ「ミスを注意する」という行為でも、やり方しだいで評価は大きく変わります。

指導の範囲内とされやすい例パワハラと判断されやすい例
個別に、具体的な問題点と改善策を伝える大勢の前で、長時間にわたって叱責する
行動や結果について指摘する「だからお前はダメなんだ」など、人格を否定する
重大なミスに、強めに注意する小さなミスにも、繰り返し威圧的に詰め寄る

ポイントは、指導の「目的」が業務の改善にあるかどうかと、「手段」がその目的に対して行き過ぎていないかです。この感覚は、条文を読むだけでは身につきにくく、具体的な場面で判断を繰り返すことで養われます。

管理職がつまずきやすい場面

ハラスメント対策で管理職が意識すべきなのは、パワハラだけではありません。立場上、次のような場面でも判断を求められます。

セクハラ:飲み会や雑談の場

セクハラは、業務中だけでなく、飲み会や出張先など、業務の延長といえる場でも問題になります。容姿や恋愛に関する発言、不必要な体への接触などは、本人に悪気がなくても相手には大きな苦痛になります。また、管理職自身の言動だけでなく、部下同士のやり取りを見過ごさないことも役割の一つです。

カスハラ:部下を守る判断

2026年10月から、カスハラへの対応も事業主の義務になりました。顧客や取引先からの著しい迷惑行為に対して、現場の担当者に「何とかして」と任せたままにすることは、部下を守ることになりません。どの段階で管理職が対応を引き取るか、どこからは対応を断るかなど、一人で抱えさせないための判断が管理職に求められます。取引先からの無理な要求という形で、BtoBの会社でも起こり得る点にも注意が必要です。

就活セクハラ:面接官としての言動

同じく2026年10月から、就職活動中の学生など求職者に対するセクハラ(就活セクハラ)への対応も義務になりました。管理職は面接官やリクルーターとして求職者と接することがあります。面接での不適切な質問や、個人的な連絡、食事への誘いなどは、求職者との立場の差が大きいだけに、会社の評判にも直結します。

コンプライアンス違反への対応

ハラスメント以外にも、部下から不正経理や情報漏えい、長時間労働などの報告を受けることがあります。管理職が「大ごとにしたくない」と握りつぶしてしまうと、問題が大きくなってから表に出ることになります。労務管理やコンプライアンスの基本も、管理職が学んでおくべき内容です。

ケースで考える:この対応は問題になるか

管理職研修では、実際に起こりそうな場面で考えることが大切です。ここでは3つの例を挙げます。実際の判断は個々の事情によって変わるため、考え方の参考としてご覧ください。

ケース1:同じミスを繰り返す部下

何度注意しても同じミスを繰り返す部下に、「何度言えば分かるんだ」と他の社員の前で大声で叱責した。ミスを指摘すること自体は指導の範囲ですが、大勢の前で威圧的に叱責するやり方は、「精神的な攻撃」と判断される可能性があります。個別に、ミスの原因と改善策を一緒に考える形に変えることが望ましいといえます。

ケース2:飲み会での「親しみのつもり」

部署の飲み会で、部下に恋人の有無や結婚の予定をしつこく尋ねた。本人は親しみのつもりでも、相手が不快に感じれば、セクハラやパワハラの「個の侵害」に当たる可能性があります。業務の延長といえる場での言動は、職場での言動と同じように扱われることを覚えておきましょう。

ケース3:取引先からの無理な要求

部下が、取引先の担当者から連日のように長時間の電話で強い口調の要求を受けている。管理職が「大事な取引先だから我慢して」とだけ伝えるのは、部下を守る対応とはいえません。要求の内容と手段が妥当かを確かめ、必要であれば管理職が窓口を引き取るなど、会社として対応することが求められます。

ケース4:面接後の個人的な連絡

面接官を務めた管理職が、面接のあと、応募者の個人のSNSに「一度食事でも」と連絡した。採用の立場にある人からの誘いは、求職者にとって断りにくいものです。就活セクハラとして問題になる可能性があり、採用活動での連絡は会社の窓口を通すなど、ルールを決めておくことが大切です。

こうしたケースは、管理職本人には「よかれと思ってしたこと」や「当たり前のこと」に見えていることが少なくありません。だからこそ、具体的な場面を材料にして「どこが問題になるのか」を考える機会が必要です。管理職同士で答えが分かれたケースは、経営者や人事が「自社としての考え方」を示すきっかけにもなります。

相談を受けたときの管理職の初動

部下からハラスメントの相談を受けたとき、最初の対応を誤ると、相談者の信頼を失うだけでなく、会社としての対応も難しくなります。初動で押さえておきたい流れは次のとおりです。

  1. 話をさえぎらずに聞く:「それくらい気にしすぎだ」などと否定せず、まずは相談者の話を最後まで聞きます。
  2. 事実を記録する:いつ、どこで、誰が、何をしたのかを、相談者の言葉のまま記録します。
  3. 相談者の意向を確かめる:どうしてほしいのか、誰に伝えてよいのかを確認します。
  4. 一人で判断せず、担当部署と連携する:社内の相談窓口や人事と共有し、会社として対応します。
  5. 不利益な扱いをしない:相談したことを理由に、相談者を不利に扱うことは法律で禁じられています。

やってはいけない対応

一方で、次のような対応は、問題を大きくしたり、新たなハラスメントにつながったりすることがあります。

  • 相談者の許可なく、行為者とされる人に相談の内容を伝える
  • 「よくあることだから我慢して」と、問題を小さく扱う
  • 相談を受けたことを、そのまま放置する
  • 行為者とされる人の話を聞かずに、一方的に処分を決める

こうした初動は、頭で分かっていても、実際の場面ではとっさに判断しにくいものです。管理職研修で具体的な場面を想定して練習しておくことが、いざというときの備えになります。

効果のある管理職研修の条件

管理職研修を実施していても、現場の判断につながっていなければ意味がありません。効果を高めるために、次の4つを意識してみてください。

1. 知識より「判断」を問う

法律の定義を覚えるだけでは、現場では役に立ちません。「この場面で、管理職としてどう対応するか」を問う形式の方が、実際の行動につながりやすくなります。

2. 正解だけでなく「理由」を学ぶ

選択肢が正しいかどうかだけでなく、なぜその判断になるのかを理解することで、研修で扱っていない場面にも応用がききます。

3. 一度きりにしない

昇進したときに一度だけ研修を受けて終わりでは、知識が古くなります。2026年10月のカスハラと就活セクハラの義務化のように、法改正があったときには学び直す機会が必要です。

4. 結果を「見える化」する

研修の効果を確かめるには、管理職一人ひとりの理解度を把握できることが大切です。どの管理職がどのテーマでつまずいているかが分かれば、個別のフォローもできます。

経営者・人事が見るべきこと

管理職研修は、人事に任せたままにしないことが大切です。経営者が確認しておきたいのは次の3点です。

  • 部署ごとの理解度:理解度が低い部署は、ハラスメントのリスクが高い可能性があります。
  • 未受講の管理職:忙しい管理職ほど受講が後回しになりがちです。
  • 経営層自身の受講:経営者や役員が自ら受講することで、会社として本気で取り組んでいる姿勢が伝わります。

また、管理職研修の受講履歴や理解度を記録として残しておくことも重要です。問題が起きたときに、「管理職にも役割に応じた教育をしていた」と示す材料になります。人事や労務管理の担当者が手作業でまとめるのは負担が大きいため、記録が自動で残る仕組みを使うと続けやすくなります。

フィラクスの管理職向け学習

ハラスメント・コンプライアンス・メンタルヘルス対策クラウド「フィラクス(PHYLAX)」は、学習とテストが「従業員向け」と「管理職向け」に分かれています。本記事で紹介した「効果のある管理職研修の条件」との対応は次のとおりです。

管理職研修の条件フィラクスでの扱い
知識より「判断」を問う管理職向けは、場面ごとに「管理職としてどう対応するか」を問う形式
正解だけでなく「理由」を学ぶすべての設問に解説が付き、回答ごとに生成AIが判断の理由を解説
一度きりにしない法改正などに合わせて、運営側が内容を確認して反映
結果を「見える化」する管理画面で、部署ごとの弱点や未受講者を把握できる

設問は、パワハラ、セクハラ、マタハラ、ケアハラ、カスハラ、就活セクハラなどの類型ごとに用意しています。法務領域は弁護士が監修しており、「場所」「頻度」「態様」といった判断の分かれ目を意識しながら学べます。

また、受講日時や回答内容、理解度は自動で蓄積されるため、管理職研修の記録を人事担当者が手作業でまとめる必要はありません。メンタルヘルスチェックや公益通報窓口ボタンなど、管理職以外の従業員を対象とした機能も同じ画面で扱えます。

料金は登録人数に応じた月額制で、20名まで月額5万円(税別)からです。なお、フィラクスの導入だけで法律上の措置がすべて完了するわけではなく、相談窓口の運用や個別の対応は導入企業で行う必要があります。

よくある質問

Q. 厳しい指導は、すべてパワハラになりますか?

なりません。業務上必要で、相当な範囲で行われる指導はパワハラには当たりません。重大なミスに対して強めに注意することも、指導として認められる場合があります。ただし、人格を否定する言葉や、大勢の前での叱責、長時間の詰問などは、目的が指導であってもパワハラと判断される可能性があります。

Q. 部下から上司へのパワハラもありますか?

あります。「優越的な関係」は役職だけで決まるものではなく、業務に必要な知識や経験を持つ部下や、集団としての部下からの言動も、パワハラに当たる場合があります。管理職が相談できる先を用意しておくことも、経営者の役割です。

Q. 管理職研修は、どのくらいの頻度で行えばよいですか?

法律で頻度が決まっているわけではありません。管理職への昇進時に加え、法改正があったときや、理解度の低いテーマが分かったときに学び直す機会を設けると、知識が古くなるのを防げます。

Q. 管理職が指導を控えてしまうのが心配です

パワハラを恐れて必要な指導までしなくなるのは、本来の目的から外れています。指導とパワハラの境目を具体的に学ぶことで、「ここまでは指導として伝えてよい」という判断の拠り所ができ、むしろ安心して指導できるようになります。

まとめ

管理職は、ハラスメントの行為者になり得る立場であると同時に、部下の相談を最初に受ける立場でもあります。パワハラだけでなく、セクハラやカスハラ、就活セクハラ、コンプライアンス違反への対応まで、管理職に求められる判断は幅広くなっています。

効果のある管理職研修にするには、知識より判断を問い、理由まで学び、一度きりにせず、結果を見える化することが大切です。管理職の判断力を高めることは、ハラスメント対策であると同時に、部下が安心して働ける職場づくりにもつながります。

フィラクスについては、公式サイトまたは24時間受付のお電話(070-2233-2540)でご案内しています。

→ フィラクス(PHYLAX)公式サイト

出典

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