ある月曜日の朝に起きること
ここで、ひとつの場面を想像してみてください(以下は説明のための想定です)。
月曜日の朝、取引先から一本の電話が入ります。「御社の社員の方が、SNSでうちの会社の悪口を書いていますよね」。慌てて確認すると、社員が週末に投稿した内容が拡散し、コメント欄には会社名が書き込まれていました。
同じ週、別の社員から退職届が出されます。理由は「一身上の都合」。ところが数週間後、その元社員の代理人弁護士から内容証明郵便が届きます。上司から長期間にわたってパワハラを受けていたとして、会社に損害賠償を求める内容でした。
会社として何をしていたのか。研修はしていたのか。相談窓口はあったのか。担当者は、すぐには答えられません。
これは決して大げさな話ではありません。SNSの不祥事も、ハラスメントのトラブルも、ある日突然、会社の問題として表に出てきます。
従業員の不祥事は「会社の責任」になる
従業員が不祥事を起こしたとき、「本人がやったことだから」では済みません。会社は、次のような責任を問われる可能性があります。
法的な責任
| 責任の種類 | 内容 |
| 使用者責任(民法715条) | 従業員が業務に関連して他人に損害を与えた場合、会社も賠償責任を負うことがあります |
| 安全配慮義務(労働契約法5条) | 会社には、従業員が安全に働けるよう配慮する義務があります。ハラスメントを放置すると、この義務に違反したと判断されることがあります |
| 法律上の措置義務 | パワハラ、セクハラ、マタハラ、ケアハラ、カスハラなどについて、会社には防止のための措置を講じる義務があります |
ハラスメントの防止措置を講じていない場合、厚生労働大臣(都道府県労働局)による助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わないときは企業名が公表されることがあります。
法律の外で失うもの
法的な責任以上に深刻なのが、会社の信用です。
- 取引先の信用:不祥事を起こした会社として、取引の見直しを求められることがあります。
- 採用力:会社名で検索したときに不祥事の記事が出てくれば、応募者は離れていきます。
- 社員の定着:「この会社は社員を守ってくれない」と感じた社員は、静かに辞めていきます。
- お客様の信頼:一度広がった悪い評判は、簡単には消えません。
SNS不祥事:一つの投稿が会社を揺るがす
SNSの普及によって、従業員の不祥事が一気に広がるリスクが高まりました。
よくあるSNS不祥事のパターン
- 勤務中の悪ふざけを撮影した動画の投稿
- 顧客情報や社内の機密情報が写り込んだ写真の投稿
- 取引先や顧客、同僚への誹謗中傷
- 来店した有名人の情報など、業務で知った情報の書き込み
- 差別的な発言や、社会的に問題のある発言
本人は「友達しか見ていない」と思っていても、投稿は簡単に保存され、拡散されます。過去の投稿から勤務先が特定され、会社に苦情の電話やメールが殺到する。こうした流れは、何度もくり返されてきました。
拡散した情報は消せない
一度インターネット上に広がった情報は、完全に消すことがほぼできません。「デジタルタトゥー」と呼ばれるように、何年たっても会社名とともに検索され続けることがあります。
SNS不祥事の多くは、悪意ではなく「これくらい大丈夫だと思った」という認識の甘さから起きています。だからこそ、何が問題になるのかを、全社員が具体的に知っておく必要があります。
コンプライアンス違反:「知らなかった」では済まされない
コンプライアンス違反は、法令違反だけを指すものではありません。社内規程や社会的なルールに反する行為も含まれます。
職場で起こりやすいコンプライアンス違反
| 種類 | 具体例 |
| 情報管理 | 顧客情報の持ち出し、私物のパソコンやスマートフォンでの業務データの扱い、生成AIへの機密情報の入力 |
| お金に関すること | 経費の不正な請求、架空の取引 |
| 労務 | サービス残業、勤怠の改ざん |
| 取引 | 下請け事業者への不当な扱い、虚偽の表示 |
| 職場の人間関係 | 各種のハラスメント |
コンプライアンス違反の多くは、本人に「違反している」という自覚がないまま起きています。「前からこうしていた」「みんなやっている」。その思い込みが、ある日、大きな問題になります。
会社が備えるべき7つのハラスメント
ハラスメントは、従業員の不祥事のなかでも、紛争に発展しやすい問題です。主なハラスメントと、会社に求められることを整理します。
| ハラスメント | 内容 | 主な根拠となる法律 |
| パワハラ(パワーハラスメント) | 職場での優越的な関係を背景に、業務上必要な範囲を超えた言動で、働く環境を害すること | 労働施策総合推進法 |
| セクハラ(セクシュアルハラスメント) | 性的な言動により、労働者が不利益を受けたり、働く環境が害されたりすること | 男女雇用機会均等法 |
| マタハラ(マタニティハラスメント) | 妊娠・出産・育児休業などを理由とする嫌がらせ | 男女雇用機会均等法、育児・介護休業法 |
| ケアハラ(ケアハラスメント) | 介護休業などの制度の利用を理由とする嫌がらせ | 育児・介護休業法 |
| カスハラ(カスタマーハラスメント) | 顧客や取引先からの著しい迷惑行為 | 労働施策総合推進法(2026年10月1日から措置義務) |
| 就活セクハラ | 就職活動中の学生など、求職者に対するセクハラ | 男女雇用機会均等法(2026年10月1日から措置義務) |
| モラハラ(モラルハラスメント) | 言葉や態度による精神的な嫌がらせ。無視、人格を否定する発言など | 職場で起きた場合は、パワハラに当たることがあります |
パワハラ:「指導のつもり」が通用しない
パワハラ防止の措置は、2020年6月から大企業に、2022年4月から中小企業にも義務づけられています。行為者が「指導のつもりだった」と考えていても、業務上必要な範囲を超えていれば、パワハラと判断される可能性があります。
セクハラ:本人の「冗談」は相手にとって冗談ではない
容姿についての発言や、しつこい食事の誘いなども、セクハラに当たることがあります。社内だけでなく、取引先との関係で起きることもあります。
モラハラ:目に見えないから発見が遅れる
無視する、仲間外れにする、人格を否定する言葉をくり返す。モラハラは身体的な暴力をともなわないため、周りが気づきにくいのが特徴です。気づいたときには、被害を受けた社員が心身の不調で休職していた、ということも起こりえます。
マタハラ・ケアハラ:制度の利用をためらわせる言動
「休まれると困る」「辞めたほうがいいんじゃないか」。妊娠・出産や育児、介護をめぐる何気ない一言が、マタハラやケアハラに当たることがあります。人手が足りない職場ほど、起きやすい問題です。
カスハラ:2026年10月から会社の義務に
2026年10月1日から、カスタマーハラスメント(カスハラ)への対策が、企業規模を問わずすべての事業主の義務になりました。顧客からの理不尽な要求に、社員が一人で耐えている状態を放置することは、もう許されません。カスハラは、店舗だけでなく、取引先との間(BtoB)でも起こります。
数字で見る、職場のハラスメントの実態
厚生労働省の委託事業として実施された「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」では、過去3年間に勤務先でハラスメントを受けたと答えた労働者の割合は、次のとおりでした。
| ハラスメントの種類 | 受けたことがある割合 |
| パワハラ | 19.3% |
| 顧客等からの著しい迷惑行為(カスハラ) | 10.8% |
| セクハラ | 6.3% |
さらに深刻なのは、その後の行動です。パワハラを受けたと感じた人のうち、最も多かった行動は「何もしなかった」(36.9%)でした。「会社を退職した」と答えた人も14.9%いました。何もしなかった理由として最も多かったのは、「何をしても解決にならないと思ったから」(65.6%)です。
つまり、ハラスメントの多くは、会社に知らされないまま進んでいきます。そして、ある日突然、退職や休職、あるいは損害賠償の請求という形で表に出てくるのです。
紛争になったとき、会社が問われること
ハラスメントや不祥事が紛争に発展したとき、会社は「防止のために何をしていたのか」を問われます。
- ハラスメントやコンプライアンスについて、社員に教育をしていたか
- 誰が、いつ、どんな内容を学んでいたか
- 相談を受け付ける窓口があり、機能していたか
- 問題を把握したあと、どう対応したか
ここで多くの会社がつまずくのが、「教育をした証拠がない」ことです。研修を一度行ったきりで、出席簿しか残っていない。誰が内容を理解していたのかわからない。これでは、会社として何をしていたのかを説明できません。
「研修はやっていたはずだ」という記憶ではなく、「いつ、誰が、何を学び、どこまで理解していたか」という記録が必要なのです。
不祥事を防ぐために、今日からできる5つの備え
- ルールを明文化する:ハラスメントの禁止、SNSの利用ルール、情報管理のルールを就業規則や社内規程に定めます。
- 全社員に繰り返し教育する:一度きりの研修ではなく、定期的に学ぶ機会をつくります。
- 理解度を確認し、記録を残す:受講したかどうかだけでなく、理解できていたかを確認し、日付入りで記録しておきます。
- 相談しやすい窓口を用意する:「相談しても解決しない」と思われない窓口をつくり、社員に周知します。
- 心身の不調に早く気づく仕組みをつくる:ハラスメントの被害は、メンタルヘルスの不調として表れることがあります。
紛争になる前に「フィラクス(PHYLAX)」で備えてください
この5つの備えを、ひとつの仕組みで支えるのが、ハラスメント・コンプライアンス・メンタルヘルスの3領域を学び、測り、記録するクラウドサービス「フィラクス(PHYLAX)」です。
フィラクスでできること
- 3領域をひとつに:ハラスメント、コンプライアンス、メンタルヘルスの学習と診断を、1つのアカウントで行えます。
- 教育の記録が残る:誰が、いつ、どの領域を、どこまで理解したかが、日付入りで記録されます。紛争になったとき、会社として教育を実施していたことを示す材料になります。
- 生成AIが「なぜそうなのか」を解説:設問はすべて3択で、回答するとその場で生成AIが判断の根拠を解説します。テストではなく学習として機能します。
- 部署ごとの弱点が見える:理解度は4段階のスコアで表示され、管理画面では部署別の理解度や未受講者を確認できます。
- 危険の兆しに気づける:高ストレスの回答や重大な回答をアラートとして確認でき、相談リクエストへの対応状況も一覧できます。
- 専門家が監修:法務領域は弁護士、メンタルヘルス領域は精神科医が監修しています。
- 外国籍の従業員にも:設問・解説・結果表示の多言語対応を標準で搭載しています。
料金は登録人数に応じた月額制で、20名までは月額50,000円(税別)から利用できます。オプションで、既存の就業規則の搭載や、提携弁護士による社外の相談窓口の設置にも対応しています。
なお、フィラクスを導入するだけで、法律上の措置がすべて完了するわけではありません。相談を受けたあとの事実確認や、行為者への対応など、会社として行うべきことは別に必要です。フィラクスは、その土台となる「教育」と「記録」を支える仕組みです。
不祥事が起きてから、記録をさかのぼってつくることはできません。今日学んだ記録は、明日の会社を守る証拠になります。紛争になる前に、フィラクスで備えてください。
フィラクス(PHYLAX)公式サイト:https://phylax-ai.jp
よくある質問
Q. 従業員がSNSで不祥事を起こした場合、会社にも責任はありますか?
A. 投稿の内容や業務との関係によっては、会社が使用者責任を問われる可能性があります。法的な責任を問われない場合でも、会社名が拡散されれば、信用や採用に大きな影響が出ます。
Q. パワハラを放置すると、会社はどうなりますか?
A. 被害を受けた社員から、安全配慮義務違反や使用者責任にもとづいて損害賠償を求められることがあります。また、防止措置を講じていない場合は、労働局の助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わないときは企業名が公表されることもあります。
Q. モラハラは法律で禁止されていますか?
A. 「モラハラ」という言葉自体は法律上の用語ではありません。ただし、職場で起きたモラハラは、内容によってパワハラに当たることがあり、会社には防止のための措置が求められます。
Q. 中小企業でもハラスメント対策は義務ですか?
A. はい。パワハラ防止の措置は2022年4月から中小企業にも義務づけられています。セクハラ、マタハラ、ケアハラについても、企業規模にかかわらず措置義務があります。2026年10月1日からは、カスハラと就活セクハラについても措置義務が加わりました。
Q. 研修を一度実施していれば十分ですか?
A. 一度きりの研修だけでは、社員の入れ替わりや時間の経過によって理解が薄れていきます。定期的に学ぶ機会をつくり、理解度と受講の記録を残しておくことが大切です。
Q. フィラクスを導入すれば、ハラスメントの紛争を防げますか?
A. フィラクスは、教育・周知と理解度の把握、その記録を支える仕組みで、紛争を必ず防げるものではありません。ただ、防止のための教育を実施していた記録が日付入りで残るため、紛争になったときに会社として説明できる材料になります。
まとめ
従業員の不祥事は、ある日突然、会社の問題として表に出てきます。SNSでの不適切な投稿、コンプライアンス違反、そしてパワハラ、セクハラ、モラハラ、マタハラ、ケアハラ、カスハラといったハラスメント。どれも「うちの会社には関係ない」とは言えません。
そして、紛争になったときに会社が問われるのは、「防止のために何をしていたか」です。記録がなければ、どれだけ対策をしていたつもりでも、説明することはできません。
不祥事が起きてからでは遅すぎます。社員を守り、会社を守るために、紛争になる前に「フィラクス(PHYLAX)」で備えてください。
出典
- 厚生労働省委託事業「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書(概要版)」https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001541298.pdf
※本記事の法令に関する記載は、2026年10月時点の情報にもとづきます。個別の事案への対応は、弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
