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就活セクハラ義務化、採用担当が押さえる3点|2026年10月施行

就活セクハラ防止措置の義務化に向けて面談ルールを確認する採用担当者

2026年10月1日から、就活生やインターンシップ参加者に対するセクシュアルハラスメント、いわゆる「就活セクハラ」の防止措置が、すべての企業に義務づけられます。根拠は改正男女雇用機会均等法です。同じ日にカスタマーハラスメント対策も義務化されるため、人事・総務の担当者はカスハラのほうに気を取られがちですが、就活セクハラは採用活動そのもののやり方を見直す必要があり、準備に手間がかかります。

この記事では、経営者・人事・総務の方に向けて、就活セクハラ義務化の中身と、採用担当が最低限押さえておくべき3つのポイントを、厚生労働省の指針に沿って整理します。

この記事の要点

  1. 面談・OB/OG訪問・インターンシップの「ルール」を決め、社員と求職者の両方に知らせる
  2. 求職者が相談できる窓口を用意し、採用サイトなどで周知する
  3. 社員教育・懲戒規定・事後対応の手順を整え、実施した記録を残す

就活セクハラ義務化とは?2026年10月1日から何が変わるのか

結論:これまで「自社の労働者」を守るための措置だったセクハラ対策が、2026年10月1日からは「求職者等」も守る対象に加わり、企業は具体的な防止措置を講じる義務を負います。

根拠は改正男女雇用機会均等法第13条と厚労省指針

改正の根拠は、2025年6月に成立した「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第63号)です。この法律で男女雇用機会均等法が改正され、求職者等に対するセクシュアルハラスメントについて事業主の雇用管理上の措置義務が定められました(改正後の第13条)。

具体的に何をすればよいかは、「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第52号)に書かれています。社内規程やマニュアルを作るときは、この指針が一番の拠り所になります。

「求職者等」には誰が含まれるのか

守る対象は応募者だけではありません。厚生労働省のリーフレットでは、求人に応募する求職者に加えて、次のような人が含まれるとされています。

  • 会社説明会や採用面接に参加する人
  • 自社の社員を訪ねてくる人(OB・OG訪問など)
  • インターンシップの参加者
  • 教育実習・看護実習などの実習生

また、指針ではSNSなどを通じたオンラインでのやり取りも対象になると整理されています。面接会場の中だけでなく、リクルーターと学生のDMのやり取りや、オンライン面談も含めて考える必要があります。

対象となる企業の規模は?

企業規模による除外はありません。社員数名の会社でも、採用活動やインターンシップを行っていれば対象です。派遣先についても労働者派遣法第47条の2の規定により同様の考え方が適用されます。

対応しないとどうなるのか

措置を講じていない企業は、厚生労働大臣(実務上は都道府県労働局)による報告徴収や助言・指導・勧告の対象になります。勧告に従わない場合は、企業名が公表されることがあります。報告を求められて応じない、あるいは虚偽の報告をした場合は過料の対象にもなります。

罰則そのものより怖いのは、採用市場での評判です。就活生の口コミはSNSや就活サイトで一気に広がります。一件の不適切な言動が、その後何年も採用に響くことは珍しくありません。

なぜ今、就活セクハラが問題になっているのか

結論:厚生労働省の調査では、就職活動やインターンシップを経験した人の約3割が、就活中にセクハラを受けたと回答しています。

厚生労働省の委託事業「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」では、2020〜2022年度に卒業し、就職活動またはインターンシップを経験した1,000人に就活等セクハラの経験を聞いています。結果は次のとおりです。

項目結果
インターンシップ中にセクハラを一度以上受けた30.1%
インターンシップ以外の就職活動中にセクハラを一度以上受けた31.9%
インターンシップ中の行為者で最も多いインターンシップ先で知り合った従業員(47.4%)
インターンシップ以外で最も多い行為者大学のOB・OG訪問を通して知り合った従業員(38.3%)
経験率の男女差(インターンシップ中)男性32.4%、女性27.5%

出典:厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書(概要版)」

注目したいのは2点です。

一つは、行為者の多くが「採用担当ではない現場の社員」だということです。インターンシップ先の社員、OB・OG訪問で会った社員。人事部が直接コントロールしにくい場面で起きています。採用担当だけが研修を受けても、防ぎきれない構造です。

もう一つは、男性の経験率のほうが高いという点です。就活セクハラを「女子学生の問題」と捉えていると、対策の範囲を見誤ります。性的な冗談、容姿や交際経験をいじる発言、飲み会での悪ノリなど、加害側に自覚が薄い言動が多く含まれていると考えられます。

さらに、インターンシップ以外の就活中にセクハラを受けた人が取った行動で最も多かったのは「労働基準監督署や都道府県労働局内の総合労働相談コーナーに相談した」(20.0%)でした。つまり、企業が知らないうちに、行政に相談が持ち込まれている可能性があります。

採用担当が押さえる3点

指針が求める措置は全部で11項目ありますが、採用の現場で特に手を入れるべきなのは次の3つです。

ポイント1:面談ルールを決め、社員と求職者の両方に伝える

結論:面談の時間・場所・実施体制・連絡手段(SNSの種類)を社内ルールとして定め、社員に周知したうえで、求職者にも採用サイトなどで知らせます。

今回の指針で特徴的なのがこの部分です。従来の職場のセクハラ対策にはなかった、採用活動ならではの措置です。指針は「面談時間及び場所の指定、実施体制並びにやり取りに用いるSNSの種類の指定その他の求職者等と面談等を行う際の規則」を定め、労働者に周知すること、そして求職者等にもホームページやパンフレットで留意事項を知らせることを求めています。

ルールの例を挙げます。自社の採用の実態に合わせて調整してください。

決めておく項目ルールの例
時間面談・OB/OG訪問は平日の業務時間内(例:9時〜18時)に限る
場所社内の会議室、または会社が指定したオンラインツールに限る。個室の飲食店・居酒屋・自宅は不可
実施体制原則2名以上で対応する。1対1になる場合は事前に人事へ申請し、記録を残す
連絡手段会社アカウントのメール・採用管理システムのみ。個人のLINEやSNSのDMは使わない
飲食・懇親会求職者との飲食は原則禁止。内定者懇親会などは人事主催とし、飲酒の強要を禁止する
聞いてはいけないこと恋愛・交際・結婚予定・容姿・身体に関する質問をしない

見落としやすいのが、リクルーター制度やOB・OG訪問です。現場社員が個人のスマホで学生とやり取りし、「話を聞かせてあげる」という形で夜の食事に誘う。こうしたケースは、会社がルールを示していないと止められません。

求職者向けの周知は、採用サイトの「選考について」やエントリーフォームの近くに、「当社社員が業務時間外に個別の連絡や食事の誘いをすることはありません」といった一文を載せるだけでも効果があります。学生側が「これはおかしい」と判断する基準になるからです。

ポイント2:求職者が使える相談窓口をつくり、採用ページで知らせる

結論:社内の相談窓口を求職者も使えるようにし、その連絡先を採用サイトやエントリー画面で明示します。

既存のハラスメント相談窓口は、多くの場合「社員向け」に設計されています。社内イントラにしか連絡先が書かれていなければ、学生はたどり着けません。指針は、相談担当者をあらかじめ決めること、あるいは外部機関に委託することに加えて、求職者等に対してパンフレットやホームページで相談窓口を周知することを求めています。

窓口を設けるときに確認したいのは次の点です。

  • 求職者が社外から連絡できる手段(専用メールアドレス、フォームなど)があるか
  • 採用担当者本人に相談が届く設計になっていないか(行為者が採用担当の場合、相談しにくい)
  • 窓口担当者と人事部門が連携できる仕組みがあるか
  • 相談対応の手順や留意点をまとめたマニュアルがあり、担当者が研修を受けているか
  • 相談者のプライバシーが守られること、相談したことで選考上不利にならないことを明記しているか

最後の点は特に重要です。学生は「相談したら落とされるのでは」と考えます。この不安を解消しない限り、窓口があっても使われません。

また、指針では望ましい取組として、大学のキャリアセンターなど教育機関の相談窓口から情報提供があった場合に連携して対応することも挙げられています。大学側の窓口とのやり取りを誰が担当するのか、あらかじめ決めておくとスムーズです。

ポイント3:社員教育・規程・事後対応を整え、実施記録を残す

結論:就業規則等に就活セクハラの禁止と懲戒を明記し、社員研修を行い、相談があった場合の事実確認から再発防止までの手順を決めておきます。

前述のとおり、行為者の多くは現場の社員です。採用担当だけでなく、インターンシップの受け入れ部署、リクルーター、OB・OG訪問を受ける可能性のある若手社員まで、教育の対象を広げる必要があります。

規程面では、就業規則や服務規律を定めた文書に、求職活動等におけるセクハラの禁止と、行為者を懲戒の対象とすることを明記します。既存のセクハラ条項が「職場における」「労働者に対する」と書かれている場合、求職者への言動が含まれるかどうか読み方が分かれるため、文言の見直しをおすすめします。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則変更後の届出も忘れないようにしてください。

事後対応では、指針に沿って次の流れを決めておきます。

  1. 相談者と行為者とされる者の双方から事実関係を確認する(相談者の心身の状況や受け止めにも配慮する)
  2. 事実確認が難しい場合は第三者からも話を聞く
  3. 被害者への配慮(行為者との引き離し、謝罪、相談対応など)
  4. 行為者への措置(懲戒その他の措置)
  5. 方針の再周知と研修の再実施による再発防止

そして、これらを「やった」という記録を残すことが大切です。研修の受講履歴、理解度テストの結果、周知文書の配布日。万一トラブルになったとき、会社として措置を講じていたことを示す材料になります。

指針が求める11の措置チェックリスト

厚生労働省のリーフレットでは、事業主の措置が11項目に整理されています。自社の対応状況を確認してください。

区分No.措置の内容確認
方針の明確化と周知・啓発①就活セクハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発する□
②行為者には厳正に対処する旨の方針と対処の内容を規程に定め、周知・啓発する□
③面談等のルール(時間・場所・実施体制・SNSの種類など)を定め、社員に周知し、求職者にも留意事項を知らせる□
相談体制の整備④相談窓口をあらかじめ定め、求職者等に周知する□
⑤窓口担当者が内容や状況に応じて適切に対応できるようにする□
事後の迅速・適切な対応⑥事実関係を迅速かつ正確に確認する□
⑦被害者に対する配慮の措置を適正に行う□
⑧行為者に対する措置を適正に行う□
⑨再発防止に向けた措置を講ずる□
あわせて講ずべき措置⑩相談者・行為者等のプライバシーを保護し、その旨を周知する□
⑪相談や事実確認への協力を理由とした不利益取扱いをしない旨を定め、周知する□

※文言は厚生労働省のリーフレット・指針をもとに要約しています。正確な内容は参考資料の原文をご確認ください。

経営者・人事・総務、それぞれの役割

就活セクハラ対策は人事部だけで完結しません。社内で役割を分けておくと、施行後の運用が回りやすくなります。

立場主な役割
経営者「就活セクハラを許さない」というトップメッセージを出す。役員自身の言動も求職者から見られていることを自覚する。リクルーター制度や懇親会のあり方を判断する
人事・採用担当面談ルールの策定と周知、採用サイトへの掲載、求職者向け相談窓口の運用、大学との連携
総務・労務就業規則・服務規律の改定と届出、相談対応マニュアルの整備、研修の実施と記録の管理
現場の管理職インターン受け入れ時のルール徹底、部下のOB・OG訪問対応の把握

中小企業では、人事と総務を一人が兼ねていることも多いでしょう。その場合は、ルールを増やしすぎず、「連絡は会社アドレスのみ」「面談は社内か会社指定のオンラインのみ」「相談先はここ」の3つから始めるのが現実的です。

施行前に見落としやすいポイント

最後に、相談を受けることの多い「抜け」を挙げておきます。

  • 内定者フォローの場:内定者懇親会や入社前研修での言動も、求職者等との関係として注意が必要です。
  • オンライン面談:カメラの向こうの服装や部屋についてのコメントは、本人が冗談のつもりでも問題になります。
  • 採用代行・紹介会社との関係:外部に選考の一部を委ねている場合も、自社の方針やルールを共有し、相談があったときの連絡経路を契約や運用で確認しておくと安心です。
  • カスハラ対策との二重管理:同じ10月1日にカスハラ対策も義務化されます。相談窓口や研修を別々に作ると、担当者の負担が重くなります。ハラスメント対策としてまとめて設計するほうが効率的です。

PHYLAXでできること

就活セクハラ対策で手間がかかるのは、「現場社員まで含めた教育」と「実施した記録の管理」です。

ハラスメント・コンプライアンス・メンタルヘルスの学習と診断をまとめて行えるクラウドサービス「PHYLAX(フィラクス)」では、就活セクハラを含むハラスメント類型ごとの設問と解説で、社員一人ひとりの理解度を確認できます。受講状況や理解度は管理画面で部署別に把握でき、研修を実施した記録としても活用できます。外国籍の社員には母国語での表示にも対応しています。

なお、ツールを導入しただけで法令上の措置がすべて完了するわけではありません。規程の整備や相談窓口の運用とあわせて、教育と記録の部分を効率化する手段としてご検討ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 就活セクハラ対策の義務化はいつからですか?
A. 2026年10月1日からです。改正男女雇用機会均等法と、令和8年厚生労働省告示第52号の指針が同日に適用されます。

Q2. 中小企業も対象ですか?
A. 対象です。企業規模による除外はありません。採用活動やインターンシップを行っている企業はすべて対応が必要です。

Q3. 「求職者等」にはインターン生やOB・OG訪問の学生も含まれますか?
A. 含まれます。応募者のほか、会社説明会や面接の参加者、社員を訪ねてくる人、インターンシップ参加者、教育実習・看護実習などの実習生も対象です。

Q4. 面談ルールには何を決めればよいですか?
A. 指針では、面談の時間・場所の指定、実施体制、やり取りに使うSNSの種類の指定などが例として挙げられています。決めたルールは社員に周知し、求職者にも採用サイトなどで知らせます。

Q5. 対応しなかった場合、罰則はありますか?
A. 直ちに罰金が科されるものではありませんが、労働局による助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合は企業名が公表されることがあります。報告の求めに応じない、または虚偽の報告をした場合は過料の対象です。

Q6. 既存のセクハラ相談窓口を使ってもよいですか?
A. 使えます。ただし、求職者が社外から連絡できる手段があり、その連絡先が採用サイトなどで周知されている必要があります。社内イントラにしか載っていない窓口では不十分です。

まとめ

就活セクハラ義務化で企業に求められるのは、採用活動のやり方そのものを「ルールとして見える化する」ことです。

  1. 面談・OB/OG訪問・インターンシップのルールを決め、社員と求職者に伝える
  2. 求職者が安心して使える相談窓口をつくり、採用ページで知らせる
  3. 規程・研修・事後対応の手順を整え、実施した記録を残す

厚生労働省の調査では、就活経験者の約3割がセクハラを受けたと答えています。義務化への対応は、法令を守るためだけのものではありません。「この会社は学生を大切に扱う」と伝わることは、そのまま採用力になります。施行日を待たず、できるところから手をつけてください。

参考資料

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